(大晦日、今日は朝から一日かけて大掃除でした。
腰がいた~いで~す。

)
今年一年舞台にお越しいただき、またこのブログに訪れていただき、本当にありがとうございました。
我々舞台人はお客様あって始めて成り立つ世界ですし、能の敷居を低くすることと自分の呟きをもらすために作ったこのブログも、もう直ぐ2年になりますが、訪問者のお客様も増えて更新の大きな原動力になっています。
どうぞ来年もよろしくお願い致します。
さて今年の総括です。
たいそうなことはかきませんが・・・(笑)
[舞台について]
今年一年を振り返ってみますと、
舞台については、シテを4回勤めることが出来ました。本来ならもう少し番数を増やして、いろんな作品にトライしてみたいのですが、現実はなかなか難しいです。
以前、先代の銕之丞先生が、
「君達はシテを舞えるだけでも幸せと思わなければいけない、歌舞伎の世界だと当主しかシテは舞えないのだよ」
そういう意味では、僕達能の世界で生きているものは恵まれているといえます。
「勧進帳」は団十郎が弁慶演じますが、弟子はその他大勢の役しか絶対に与えられません。
僕達は、「安宅」でその他大勢の山伏の役もしますが、シテの弁慶の役もすることが出来ます。
あとは集客の問題が大きいのですが、やりがいがあることは確かです。
今年の演目は、
3月銕仙会ー「邯鄲」
6月青葉乃会ー「自然居士」
10月青山能ー「隅田川」
11月逗子能三昧ー「船弁慶」
「船弁慶」は3回目でそれ以外はみな初役でした。
どの作品もそれなりに難しいのですが、一番手ごわかったのはやはり「隅田川」でした。
作品の持っている世界があまりにも大きいので、私の人間の小ささを思い知らされました。
もっともっと心の大きな人間にならないと、能「隅田川」は私を相手にしてくれません。
それがイヤというほど思い知らされました。
こんなことを書くと、当日観に来られたお客様に対してとても失礼のような気もしますが、その成長過程をご覧になっていただくことも大きな意味があるのではと、はなはだ勝手なことを言っておりますが、自分としては精一杯の舞台でした。
私の舞台での癖として、緊張すると体がぶれてしまうことがあるのです。
自分では気が付いていない時にそうなっているのが怖いのですが、観るお客様にはとても失礼なことなので、もっと精神的に強くなって、この癖を治す、これをまず克服しなければならない来年の課題です。
そうするともう少し世界が広がると思うのですが、とにかく頑張ります。
[プライベートなことについて]
次にプライベートな意味では、今年の一年はいままでに経験したことのない波乱万丈の年となりました。
まず1月に母親が急逝しました。
ANLという筋肉が硬直していく病気で、10万人に一人といわれる難病とされています。会うたびに身体は小さくなって、最後には料理を作ることさえ出来なくなっていました。もう長くは生きられないと思っていましたが、その知らせはまったく予期しない形で襲ってきました。
母との想いでは、母に迷惑をかけたことしか思い浮かんできません。
親孝行をしようと思うときには親はいない、とよく言われますが、まさにその通りになってしまいました。
次には5月に荻原達子さんが亡くなり、そのあとを追うように6月には観世榮夫先生が亡くなられました。このお二人のことはブログで詳しく書いていますので、ここでは省略しますが、とにかくこのお二人は私の能の修行においてなくてはならない方でした。
正直言ってこれから僕はどうすればいいのだ、そんな危機感さえ感じてしまうほどのショッキングな出来事でした。
母親を無くした悲しさとはまた別な意味で、大きな悲しみでした。
今の自分にできることは、このかけがえのない3人のためにも、舞台でいい結果を残していくこと、これに尽きます。
来年はさらなる飛躍の年になるよう、頑張っていきたいと思います。
[あるお手紙をいただいて]
短期能楽教室1期生の方が、今年の秋より台湾に長期出張に出かけられました。
とても熱心に稽古されていた方で、その方のブログには稽古の様子をかかれているのですが、後輩の方にはずいぶん役立っているようです。
大学の先生で女性の方なのですが、先日近況便りをいただき、その中にとてもステキな言葉がありましたので紹介します。
『言葉の通じない、習慣も違う国に一人でいるというのは、まるで何も出来ない子供になってしまったようにも思え、素の自分を試されているようにも感じます。
大事なのは、笑顔と感謝の言葉なのだと実感します。
なんだか自分がとてもよい人になったかと錯覚したり・・・』
『笑顔と感謝の言葉』は人との付き合いの原点ですね。
彼女の今の立場が実感としてよく伝わってきます。
このことを忘れなければ夫婦喧嘩なんて起こりはしないのですが、慣れた現実はなかなかこのようにはいかないものですね、ハイ! (爆)
改めまして、どうぞ来年もよろしくお願い申し上げます。