
『クワッド』は二部構成になっていまして、一部の衣装が上の姿で、二部が前の記事に載せた白装束です。始めは顔を出していましたが、生々しい(醜い!?)とかでベールで隠すことになりました(^_^;)
この四人は誰でしょう? (笑)

今回上演する『クワッド』について具体的に説明してみます。
いっぺんが10歩分の長さの正方形があって、そのかどに4人が座しています。
まずAから始まり、正方形の辺→対角線→辺→対角線・・・の順に、 左の図でいうと、①②③④⑤⑥の順に歩いて行きます。(写真をクリックして大きくしてみてください)
対角線の中心[E]には小物体が置いてあり、これが強力な磁気を発して近づけません。仕方なく対角線の中心のところでは③のように迂回して通過します。
この辺→対角線→辺・・・の運動を続けると、4辺すべてを通り終わったあと、元の場所に戻ってくるのですが、
これで1コース終了したことになります。
この後Bが加わり、AとBで新たに1コース歩み、順にC、Dが加わって、一人、二人、三人、四人とこのコースを歩んでゆきます。

4人の後は、こんどは一人ずつ退場してゆき、一人になればまた加わってゆき、またまた4人になります。
これを繰り返すと、4人がそれぞれ単独歩行を行うことになり、すべての組み合わせの二人歩行、三人歩行が行われることになります。
これだけ行うのに、歩行のスピードは次第に上げていきますが約40分かかりました。
無機的に歩く!
演出家から、無機的に歩くようにとの指示が出ています。
始めに見せられた資料の映像では、西洋人のダンサーが、大またにずたずた歩いているという印象を受けましたが、われわれは能のすり足歩行をしなければなりません。
能のすり足の運びは、必ず序破急が付いており、力を中に込めて動き出し加速をつけていくというのが基本です。長い橋掛かりをゆっくり歩く時でも、歩き始めには力を込めてて、それを持続して歩んでいます。
無機的という歩き方は、この序破急がなく、淡々と同じスピードで歩かなければなりません。
これには思いもよらず苦労をしました。
いつもの歩き方を変えなければなりません。
簡単に言ってしまえば、はじめから気を抜いたような歩き方をすればよいことになりますが、
これがなかなかムツカシイのです(~_~)

今回の『クワッド』の特徴は、このパーカッションによってそれぞれに個別の音が与えられています。
役者が登場するとその打楽器が鳴り、歩行中は鳴りつづけ、退場すると止みます。
打楽器も登場している役者の人数によって、単音、二重音、三重音、四重音になり、
歩行のスピードは、この打楽器のリズムに大きく左右されることになります。
この奇妙な楽器たち、紹介します。
右下から、中近東産の太鼓。その上は東急ハンズ産の木片。その横はチベット産のチンと廃材利用のシャリ。左下がタイ産のドラ。
私の音は東急ハンズ産の木片です。(^。^) 「カン、カン、カン・・・」という音がします。
このパーカッションの音楽を聴いているだけでも楽しいです。
ベケットのテキストではこのほかに、照明、足音、衣装の色、まで各役者固有のものを当てるようにとの指示がありますが、今回はこれは割愛です。(衣装の色は固有でした)
二部では、色彩がない白装束で、歩行も序破急をつけて行い、4人全員そろったところで終了です。
この『クワッド』にどういう意味があるのか、私には言葉での説明は不可能です。<(_ _)>
この『クワッド』を今回の企画者でもある早稲田大学教授・岡室 美奈子氏が詳しく解説されています。→
こちらまで。
この『クワッド』は銕仙会の舞台で行われる11月5日(2時半始)に上演されます。
お問い合わせは銕仙会まで。→03-3401-2285
今回の配役
歩行の能役者ー清水寛二、西村高夫、柴田 稔、谷本健吾
パーカッションー橘政愛
演出ー笠井賢一