滋賀県の八幡宮能舞台で「薪(たきぎ)能」。
11月15日
長浜八幡宮で秋季例大祭が行われ、この行事の一環として薪能が奉納されます。
長濱に住んでおられる友人の能楽師・古橋正邦さんが、毎年この薪能を奉納されているのですが、
今回初めてお呼びいただきまして、古橋さんと私で「小袖曽我」を務めることになりました。
実はこれにはワケがありまして、古橋さんのご子息・正明さんと私の息子・昂徳は同年輩で、二人とも大学を卒業する年になっています。
子どものころは二人とも子方で能にたずさわっていましたが、それ以後能の稽古からはだんだん遠ざかり、大学卒業を機に完全に能の世界から離れることになりました。
そこで今回息子たちにツレ役をあてがい、古橋さんと私、それぞれの息子たちとの最後の舞舞台をしようということで「小袖曽我」の演目が決定されました。
配役は
曽我五郎 古橋正邦
曽我十郎 柴田稔
鬼王 古橋正明
団三郎 柴田昂徳
「小袖曽我」という作品は、仇討の物語『曽我物語』を典拠にした作品です。
父の敵・工藤祐経(すけつね)を討つため、曽我兄弟は母との今生の別れのために対面します。
弟の五郎は母が出家せよという命に背いたため勘当されていましたが、十郎の嘆願によって勘当が許されます。
兄弟は母との和解のもと、晴れて仇討ちに出かけることができるのでした。
一番の見せ場は、若い兄弟がもう生きている母の顔を見ることのないだろうとの覚悟の上で颯爽と舞う相舞(あいまい)です。
ツレ役の鬼王と団三郎とは、幼少のころから曽我兄弟に仕えた兄弟の家来で、能「小袖曽我」では兄弟のお供役として最初の場面にだけ登場します。
アップしているチラシの写真は、私の息子・昂徳(向かって右側)が中学2年生の時に甥っ子の梅若慎太郎くんと「小袖曽我」を演じた時のものです。
第4回青葉乃会での公演でした。
古橋さんから息子の小袖曽我の写真を使いたいとの申し出があり、お貸ししたのですが、こんなに大きく載っているとは思っていませんでした。
このチラシをご覧になった方は、今回の「小袖曽我」は若い能楽師が演じるのだと思ってしまいますよね。
チラシに偽りあり!(笑)
見た目はともかく、気持ちだけは若々しく舞い納めたいと思います!
私の息子は子方の時代には100番以上の舞台に出ていました。しかし中学、高校と進学するにつれて次第に能から遠ざかってしまいました。
私としては跡を継いで能の世界に残ってほしかったのですが、こればかりは本人の意思ですので仕方がありません。今回が最後の能の舞台になってしまいます。
舞台に向け「小袖曽我」の稽古をしていても、10年ほど前にやってことをほとんど覚えておりました。子どもの記憶力はうらやましい限りです!
親子そろっての最後の舞台、良い舞台にしたいと思います。