3月14日は銕仙会の定期公演でした。
番組
能「弱法師(よろぼし)」盲目之舞 観世清和
狂言「箕被(みかづき)」 野村万蔵
能「国栖 (くず)」白頭 野村四郎
くわしくはこちらまで!
今日はこの日の演目、「国栖」に使われる作り物ー『舟』ーについて。
そのまえに「国栖」について簡単な解説を。
能は「伊勢物語」、「源氏物語」、「平家物語」などを題材に、ほとんどが平安時代の日本の様子を伝えているのですが、なかには古代の日本を背景にした作品があります。
「国栖」はそのひとつで、7世紀後半・奈良時代のはじめ、壬申の乱での出来事を扱っています。
天智天皇のあと、皇位をめぐって弟の大海人皇子と息子の大友皇子が争い、大海人皇子は吉野の山に逃れる、このところから「国栖」は始まります。
吉野山に住む老夫婦のはたらきによって大海人皇子は命が助かり、蔵王権現が後に天武天皇となる大海人皇子を加護して天武の御世を祝福するという祝言の能です。
大海人皇子を敵から守るために使われるのが上の舟。
これをうつぶせにして、その中に大海人皇子を隠すのです。
この布を張りまわした舟は「国栖」だけに使われる能の作り物になっています。
大人だととうてい隠れきれないので、この大海人皇子の役は子方が受け持ちます。
(今回は私の愛弟子!?の柴田理沙ちゃんがこの役を勤めました!)
「船弁慶」などで使われる舟は右の写真のように骨組みだけなので、人を隠すことが出来ません。(^。^)
昔の人がいろいろ知恵を絞って考えたのでしょうね。
銕仙会ではこの「国栖」の舟はいつもは布を取った骨組みだけで保管しています。
その骨組みは企業秘密です!(笑)
「国栖」が出るたびに布を被せるのですが、これは書生さんの仕事になるのです。
私もさんざんやってきましたが、これがなかなか大変な仕事なのです。
書生泣かせ、とはこんなことをいうのかもしれません。それも修行のひとつなのですが、舞台はボスから書生さんまで、一体となって作り上げていること、お分かりいただければありがたいです。