12月14日、銕仙会定期能の公演がありました。
番組
能「葛城」(かずらき) 大和舞 観世銕之丞
狂言「隠狸」 野村万蔵
能「猩々乱」(しょうじょうみだれ) 谷本健吾
「葛城」に大和舞の小書きが付いた演出で行われますと、上の写真のように白の引き回しを掛け、雪綿で覆われた作り物が出されます。これは舞台が今、白一色の雪深き葛城山であることを強調しています。
シテはこの作り物のなかに中入りし、後の葛城の神はこの中から現れるのですが、むかし葛城の神は役(えん)の行者(ぎょうじゃ)の命にそむき、葛城山の岩に縛り付けられ、今なおも蔦葛に覆われ苦しみ続けている、そういう設定で現われ、この作り物は葛城山ではなく、葛木の神が縛り付けられた岩に変っているのです。
こんなところは能ではいろいろありますが、いかにも古人の自由な発想が見えて面白いところです。
後の舞も普段の序ノ舞から、榊を手に持ち、鎮魂的な意味合いを持つ大和舞に変ります。
小書きのない普通の「葛城」はこの作り物を出さず、ただ幕に中入りするだけなので、作り物を出す大和舞の小書きの演出の方が、はるかにわかりやすく説得力のあるものだと思います。
普段のときにも前シテのかぶる笠は雪綿で覆われていますが、大和舞の小書きの時は柴を背負い、なぜか杖を突くのです。なぜでしょうね・・・?
能「葛城」はもちろん冬の作品ですが、夏の薪能などでもしばしば上演されます。
冷を求めてのことなのでしょうかね・・・
トメは谷本健吾君の「猩々乱」の披きでした。
「披き」は能役者が経験を踏んでいく一つの節目となる曲目なのです。
「千歳」(「翁」の仲のツレの役です)、「石橋」、「猩々乱」、「道成寺」などを演じる時、披きと言っています。
銕仙会主催の公演も、今週の青山能(19日)「井筒」を残すのみとなりました。
一年なんてあっという間に過ぎ去ってしまいますね。
今年も最後までいい舞台が出来ますよう、頑張りたいです!
大切なことを忘れていました。
青山能の前に研究公演がありまして、書生さんの安藤貴康君が「小鍛治」を勤めます。
初シテです!
能楽師として記念すべきことですし、生涯の思い出となる公演です。
悔いの残らないよう思いっきり挑戦して欲しいですね。
ちなみに私の初シテも「小鍛治」でした・・・