昨日の青山能は、
仕舞 「二人静」 長山桂三、谷本健吾
狂言 「雁大名」 小笠原匡 ほか
能 「三輪」 馬野正基 ほか 地頭 柴田 稔
上の写真は「三輪」の舞台に出される作り物です。
能「三輪」はどういう能なのだろう、なかなかうまく説明できません。
三輪明神の話だ、といってしまえばそれまでなのですが、
能「三輪」の前シテは質素な里女、後シテは巫女がでてきます。
これだけだと、三輪明神は女なのかと思ってしまいます。
いえいえ決して女などではありません。
明神というくらいだから男に決まっていますし、三輪明神は日本神話に出てくる「大物主」のことで、「大物主」は自分を三輪山に祭るように命じた、これから三輪山が神体となり三輪山崇拝が始まったとされます。
なぜ能「三輪」は女しか出てこないのでしょうか。
ワキの玄賓(げんぴん)僧都の前に、鄙びた女性が現れ、秋寒い一夜の出会いがあり、
女は僧都から衣を一枚もらってこの作り物の中に消えてゆきます。
後はこの作り物が杉の神木となり、この中から三輪明神が巫女の姿となって現れます。
しかも烏帽子を着て、この巫女は男装しているのです。つまり祝子(ほうりこ)が現れたということなのです。
これからこの祝子は太古の神婚説話を語り舞い、夜な夜な女のもとにかよう男は実は、三輪の神木の杉の木に住む蛇神であったことが説かれ、この作り物はその蛇神の住処に変身してしまいます。
そのあと祝子の姿となった巫女が神楽を舞うのです。
神楽の後は太古の世界へと遡ってゆきます。
天照大神が岩戸に隠れ、八百万の神たちが嘆くあの世界です。
このとき巫女は天照大神に変身し、この作り物を岩戸に見立て、岩戸を少し開くさまを見せます。
能「三輪」はなんとも不思議な世界です。
これを一口で説明できません。
しかもこの作り物がこれほどまでに重層性をもった存在になっているのです。
『不思議大好き!』 の世界ですね。