昨日、宝生能楽堂で都民劇場能という催しがありました。
番組
狂言「棒縛り」 野村萬斎 石田幸雄 野村万之介
能「井筒」 物着 シテー観世銕之丞 ワキー野口敦弘
笛ー一噌仙幸 小鼓ー大倉源次郎 大鼓ー亀井忠雄
地頭ー山本順之他

この日の「井筒」は『物着(ものぎ)』という小書き(特殊演出)が付いていましたので、井筒の作り物はいつもより高さが低くなっています。
この『物着』の小書きが付くと、前場と後場をつなぐ間狂言の語りがなくなり、シテは幕へ中入りせずに舞台の後見座で装束を替えます。
また井筒の作り物が低くなって、後場でシテは作り物に左手を添えて、しゃがみこんで覗き込む型をします。いつもだと立ったまま下を覗き込むのですが。
今は秋も真っ盛りで、ススキがとても綺麗な時期です。
この日に使ったススキは穂もピンと伸び、葉っぱもほそく綺麗に広がって、ことのほか繊細で美しいものでした。
(写真の写りがよくありませんが (^_^;) )
<結婚式で「井筒」の謡を>
結婚式で謡う祝言の謡は、能「高砂」の一節を謡うのが定番になっていますが、
「井筒」のクセの後半部分を謡うこともあると初めて知りました。
この日の地頭を勤められた山本順之師から聞いた話で、昔に観世寿夫先生に教えられたとのことでした。
少し長いですが「井筒」のクセ後半を紹介します。
『
筒井筒 井筒にかけしまろがたけ 生(お)ひにけらしな 妹(いも)見ざる間に と
詠みて贈りける程に その時女も
比べ来(こ)し 振分髪(ふりわけがみ)も肩過ぎぬ 君ならずして 誰かあぐべき と
互に詠みし故なれや 筒井筒の女とも
聞こえしは有常(ありつね)が 娘の
清き(古き)名なるべし 』
伊勢物語二十三段の男の歌と女の歌が引用されています。
男の歌
筒井筒 井筒にかけしまろがたけ 生(お)ひにけらしな 妹(いも)見ざる間に
(昔あなたと遊んだ頃、井戸の高さと比べた私の背丈も、あなたとお会いしないうちに、ずいぶん大きくなりました)
女の歌
比べ来(こ)し 振分髪(ふりわけがみ)も肩過ぎぬ 君ならずして 誰かあぐべき
(幼いころあなたと比べあった振分髪(子供の髪)も肩から下に垂れるほど長くなりました。この髪をあなた以外の人のためには結い上げようとは思いません。)
幼馴染のころ芽生えた恋心が、大人になって再会した時にも同じ思いでいたという、ほのぼのとした恋の歌のやり取りです。
結婚式では、最後の部分で『古き名』を『清き名』に変えて謡うのだそうです。
純愛の話として、結婚式にこの謡を謡うのはステキですね。
そんな相手がいればの話ですが・・・・(笑)