翁の舞 今回の<もう一つの「翁」>の試みで一番興味をそそられたのは、この翁の舞の部分でした。
千歳の舞の部分もいろいろ工夫されていましたが、山本東次郎家のお二人(東次郎・則重)の同じ流儀でのことでしたが、翁の舞に関しては観世と宝生の異流競演で、今回の公演ならではの試みが新鮮な感じを受けました。
千歳の舞のあと、白式尉の面をつけた権守(翁)二人が12月往来を始めます。
この十二月往来はめでたい文句の羅列で、毎月の景物に結びつけて祝言にとりなし、問答形式でおこなうというものでした。
観世の翁が問い、宝生の翁が一指し舞いながら答えるという形です。
少し紹介してみます。
十二月往来。
観世「正月の松の風」 宝生「きんの琴を調む」
観世「二月の燕は」 宝生「疾(と)う成り祝いをはやむ」
観世「三月の霞は」 宝生「四方の山にたな引く」
このときの文意と宝生の型は、
正月 徳成る事を祝うー扇開キ、上ゲ扇
二月 初花を祝うーカザシ見
三月 霞の方を見るー扇一ツハネ
(パンフレットより)
こんなのが十二月続きます。
素朴な対話劇という印象を受け、なかなか面白かったです。
このあと翁の舞に移るのですが、これは今回の公演のメインイベントになっていたように思います!
通常の翁の舞を、観世、宝生それぞれ型で相舞するのです。
この相舞は、まさしく『似て非なるもの』でした。
翁の舞は『天・地・人』の拍子で、三つの部分に分かれています。今回二人の舞はそれぞれの部分で、はじめの一歩と最後の拍子はあっているのですが、あいだの動きは微妙に違っているのです。
その対比が、「めずらしき面白さ」、という印象を受けました。
観世は派手、宝生は地味、という先入観があったのですが、以外と宝生の型が派手なのには驚きました。
次回は三番三の舞と延命冠者・父尉の登場部分を紹介します。