この公演を見た知人が開口一番、能楽堂でなく野外の、たとえば神社の舞台などで観たかった、ということを言っていました。
言いかえれば、里神楽的な素朴な要素が強かったのでしょうか・・・?
もう一つの「翁」 の公演は早稲田大学教授の竹本幹夫氏を中心として運営されていましたが、稽古の時にも、また当日のパンフレットにも言われていることですが、この公演はあくまでも、≪学問的な実験≫ なのだそうです。
では今回行われた「翁」の、その試みのねらいを少し探ってみたいと思います。
3月16日付けのこのブログでも<もう一つの「翁」>のことを紹介しましたが、超簡単に説明すると、
『鎌倉時代に翁猿楽が発生し、能楽が成立した室町時代に観阿弥によって改作され、現在上演されているのはこの改作された「翁」。
今回の<もう一つの「翁」>は、観阿弥によって改作される以前の、「古い翁」を復元しようとするもの。』
ということになります。
この「古い翁」はそれを専門に演じる座によって、奈良の興福寺や春日若宮の御祭などで江戸末期まで上演されていたのですが、明治維新後は祭礼の中絶によってこの「古い翁」は消滅したということです。
「古い翁」では、
『露払い(千載)、翁面(白式尉)、三番猿楽(三番三)、延命冠者(えんめいかじゃ)、父尉(ちちのじょう)の5役が登場するものであった』
現代の能楽の翁は、
『延命冠者と父尉を割愛した、略式の翁が演じられるようになった』 (企画書より抜粋)
また、
『復元にあたっては、元々は屋外での四座(観世、宝生、金春、金剛)立会いの形式であったろう奈良の神事猿楽の翁を意識して、立会の翁を構想したが、能舞台の上演という環境を考慮して、今回は上掛り両座(観世、宝生)立会の形式を採用することにした。』 (企画書より抜粋)
実際行われた舞台の様子は、演者側の観点から次回報告します。