今日は、すでに日付が変わっていますので昨日のことですが、私が所属しています銕仙会の定例公演の初会の申し合わせがありました。「申し合わせ」とは、いわゆる本番前のリハーサルのことです。
今年の初回の演目は、いつものように「翁」に始まり、「二人静」、「鷺(さぎ)」という曲目です。いつもお正月に行われる銕仙会の公演は早くから完売になるのですが、今年は完売の時期は例年にまして早かったようです。
その大きな要因としてあげられるのが、「鷺」の演目だと思います。
それを演じるのは観世銕之丞師の嫡男、14歳の淳夫(あつお)君!
この「鷺」という曲を演じることができるのは、少年か、あるいは還暦を過ぎた老年の方に限られています。ことに少年が演じる「鷺」は能の家の嫡男に限られて、いわゆる一子相伝の重い習いの曲になっています。私は銕仙会に入門して以来20数年になりますが、少年が演じる「鷺」の上演は初めてですし、めったに見れるものではありません。そんなこともあって早くから人気が出たのだと思います。
この「鷺」という曲は、「俊寛」と同じく、平家物語に語られています。「俊寛」のようにある事件ではなく、古代の引用として紹介されています。平安時代の初期、君政が正しければ空に飛ぶ鳥(鷺)まで宣旨に従うという故事を引用しています。この「鷺」のシテは文字どうり鳥の鷺です。鷺に似せ、純白の装束を身にまとい、頭には鷺の鳥の冠を乗せています。そこに求められるのは人間にはない純粋性だと思うのです。それを表現できるのは無垢な少年、そして少年に戻った老年、その人たちにしか表現できない世界、それが「鷺」だと思います。
銕仙会の初回の様子、いずれ改めてレポートしたいと思います。
昨日更新した、「俊寛」の記事も、次回は青葉乃会の公演の写真を基に、そのときの舞台の模様を記事にしたいと思っています。