能「竹生島」 女体・道者
「竹生島」には観世流では本来『女体・道者』という小書き(特殊演出)はありませんが、今回他流の小書きを参考に新たな試みで上演されます。
そのために昨日銕仙会の公演に先立ち、青山の銕仙会の舞台で研究講座がもたれました。
銕仙会講座 《「竹生島」 女体(にょたい)・道者(どうじゃ) をめぐって》ー講師 石井倫子氏ー というものです。
「竹生島」という能は、いわゆる脇能です。
琵琶湖上に浮かむ竹生島(宝厳寺)に祀られる弁財天、それを守護する龍神、これらによってもたらされる国土安穏、天下泰平を祝うということがテーマになっています。
前シテは老翁、前ツレは蜑女(あまおんな)が船に乗って現れ、醍醐天皇に仕える臣下を竹生島に案内します。やがて老翁と蜑女は海の中に消え去り、老翁は龍神、蜑女は弁才天の姿となって現れ、その雄姿をあからさまにし、国土鎮護を約束し、また海の中にに消え去ります。
今回の女体という小書きが付くと、後の役が逆転します。
つまり、前シテー老翁、後シテー弁財天(龍神)、
前ツレー蜑女、後シテー龍神(弁財天)、 カッコ内は常の役です。
つまり、男→男、女→女が、男→女になり、女→男になります。
今回の講座でひとつ発見したことがあるのですが、
能「竹生島」のなかで、ここは女人禁制のはずなのに、どうして女を伴っているのかと脇が不審に思い問いかけるところがあります。それに対し、弁財天は女体であり、女人往生は約束されている事だと答えています。
女人禁制なのに女人が参詣できる、このことをもっと説得力を持つ事実がありました。

竹生島の弁財天(女)は、頭上に宇賀神像(人頭蛇身の老人像)を戴く、宇賀弁財天像なのです。
つまり弁才天(女)の頭の上に、からだはうづを巻いた蛇身、その上に老人(男)の顔が乗っているという事なのです。
もうひとつの小書き、『道者』は、間狂言の替えです。
今回の講座のテキストによると(万作家のテキストのよる)、
常は末社が出てきて竹生島(宝厳寺)の由来を語るのですが、『道者』だと竹生島に参詣する巡礼者達が出て来て、竹生島の能力と賑やかな問答を見せるというものでした。
この中で女人禁制のことをめぐり、巡礼者の問いかけに対して能力はとてもユニークな回答をしています。
「弁才天は女体にて即ち殿御を頭に戴いてござる。これは末世の衆生女は夫を大切に致せ殿御方便」
男と女が一体になっているゆえに、女人禁制が解かれるというのです。
これこそ明朗簡潔な答えです。
昔の人の発想はとてもユニークですね。
こんどの舞台では舞台ではいかなる展開になるか楽しみです。
狂言「見物座衛門」
見物座衛門という男が、京都深草の祭りに出かけいろんな所作を見せます。
和泉流のみに伝わる、一人狂言です。
今回は人気狂言師、野村萬斎さんの独演です!