菟名日処女(うないおとめ)が犯した罪とは
菟名日処女(うないおとめ)は水鳥の命を奪った。それを後悔して自ら命を絶ち、求愛していた二人の男もあとを追って死んでしまった。
3人の命が失われた事件、能の一般的な創作法としては、菟名日処女を主人公にすると、菟名日処女成仏を願って仏事が営まれ、死後の世界で迷える魂は成仏し、報謝の舞を舞って完結するという鎮魂の能が出来上がるわけですが、能「求塚」では菟名日処女は地獄で永遠に責め苦を受けるという物語になっています。
能「求塚」の後場
【僧による供養】
ワキの僧は、常の能のように亡者を弔うために仏事を行います。
『南無幽霊成等正覚、出離生死頓證菩提』 〈亡者を弔うときに唱える文句〉
(どうか幽霊よ、悟りを開き、生死の迷いを離れて、速やかに成仏せよ)
【地獄の菟名日処女(うないおとめ)の出現】
塚(地獄の住みか)の中から聞こえる菟名日処女の亡霊の声
『おう曠野(こうや)人稀なり。わが古墳ならでまた何者ぞ。屍を争う猛獣は去ってまた来る。塚を守る飛魄は松風に飛び。電光朝露なおもって眼にあり。古墳多く少年の人。生田の名にも似ぬ命。去って久しき故郷の人の。御法の声はありがたや。あら閻浮恋しや。・・・苦しみは身を焼く、火宅の住みかご覧ぜよ。』
(おお、この荒れ果てた野原に来る人はまれで、わが古墳以外には何もない。ただ死骸を争いあって食う猛獣が行き来するばかりだ。あの二人の男の妄執も人魂となってわが塚につきまとい、松風に乗って飛び回っている。電光朝露という世のはかなさはまさにこの光景のことだ。古墳の多くは若くて死んだ少年の墓というが、所の名の生田にも似ず、私ははかない命を失った。この世を去って長い年月がたったが、読経の声は本当にありがたいことだ。ああ、生きていた世の中が恋しい。・・・身を焼かれる地獄の苦しみ、この火宅の住みかを見てください。)
【僧の再度の読経】
菟名日処女(うないおとめ)の変わり果てた有様を見て、ワキの僧はなお成仏を願って読経する。
『あら痛わしの御有様やな。一念ひるがえせば無量の罪をものがるべし。
種々諸悪趣地獄鬼畜生。生老病死苦以漸悉令滅。はやはや浮かみ給へ。』
(ああいたわしい有様だ。執着している一念を捨てれば、計り知れない罪からも逃れることができるはずだ。
種々諸悪趣地獄鬼畜生。生老病死苦以漸悉令滅。
種々・諸悪趣・地獄・鬼・畜生(しゅしゅ・しょあくしゅ・じごく・き・ちくしょう)
生・老・病・死・苦・以・漸・悉・令滅(しょう・ろう・びょう・し・く・い・ぜん・しつ・りょうめつ) 法華経普門品の喝(絶対の真理)
(「悪趣」は、この世で悪行をなした者の死後の世界、すなわち、地獄、鬼畜、畜生道。また、生・老・病・死の苦しみも観音の慈悲は、すべてを消滅するであろう)
(どうか早く成仏しなさい)
【菟名日処女のひと時の救済】
僧の読経によって、一時的な安らぎを得る
『ありがたやこの苦しみの隙(ひま)なきに。御法(みのり)の声の耳にふれ。大焦熱の煙のうちに。晴れ間の少し見ゆるぞや。ありがたや。』
(ありがとうございます。絶え間ない苦しみの中で、読経の声が聞こえたおかげで、大焦熱地獄の苦しみが少し和らぎました。本当にありがとうございます。)
ここまでの流れの中では、菟名日処女(うないおとめ)は成仏できると思わせています。
しかし・・・
【菟名日処女(うないおとめ)を襲う地獄の責め苦】
菟名日処女の罪、すなわち、二人の男の死、水鳥の死。この二人の男と水鳥から地獄で報復を受けます。
『恐ろしやおことはたそ・・・左右の手を取り来たれ来たれと責むれども。
また恐ろしや・・鴛鴦(おしどり)の鉄鳥(てっちょう)となって・・・頭(こうべ)をつつき髄(ずい)を食う。』
(二人の男・小竹田男子(ささだおのこ)と血沼丈夫(ちぬのますらお)の亡霊が現れ、処女(おとめ)の左右の手を引っ張って責めかける。殺した水鳥は鉄鳥(地獄の鳥)となって現れ、剣のような鉄のくちばしや足で頭をつつき脳髄を食う)
この後菟名日処女(うないおとめ)は本性を現します。
次回に!

「求塚」の作物”塚”
前場では菟名日処女(うないおとめ)の墓
後場では地獄に堕ちた菟名日処女の住処(火宅)
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