第12回逗子能狂言公演(平成30年2月24日) 続編
後場
ここで注意しておきたいことがあります。
稲荷明神の神様はキツネではありません。キツネは稲荷明神の使者にあたり、神の使いのもの、正しくは神使(しんし)と呼ばれ、
神使は神意を代行して現世と接触するものと考えらている特定の動物のことをいいます。
(稲荷明神ーキツネ、春日明神ーシカ、八幡神ーハト、熊野権現ーカラスなど)
神の使いなのですが、時には神そのものと考えられることもあるようです。
小鍛冶の作者も稲荷明神の神様をキツネと想定していますが、キツネはあくまでも使者だということを分かっておきたいです。
・後シテ(狐霊ー稲荷明神の使者)

後シテの出で立ち
面ー狐蛇(きつねじゃ)、黒頭
着付ー浅黄地に山道に雲版釘抜模様
半切ー御納戸地に雁木模様
今回の小鍛冶の小書き(特殊演出)の「黒頭(くろがしら)」は、後シテに黒頭を使用することで名付けられています。
通常ですと赤頭に狐を載せていますが、黒頭になると狐はありません。白頭での演出ですと狐を使うのは有り無しの両用のようです。
白頭の小書きはあまり上演されないのでよくわかりませんが。
今回の公演をご覧になった方から、狐は作り物はどうしてなかったのですかと質問を受けましたが、このような決まりことがあるためです。

通常の小鍛冶(赤頭に狐)
・狐蛇(きつねじゃ)の面について

使用しました面は、これも石塚シゲミ氏作の「狐蛇」です。
今回の公演のために新調された面です。
狐蛇について紹介された文章がありますので記載しておきます。
『観世流特有面で、般若の型変わりです。初めから角を作らず、全体をやはり金泥彩色にしているうえ、頭頂部に黒い細かい点々を施していて、肉月も厚くその容貌は男性的にさえ見えます。瞳孔の上の一部が眉の中にかくれていることも、般若系の面としては珍しいものです。用途は狐にちなんだ「小鍛冶」「殺生石」の特殊演出の場合のみです。』(「能面」中村保雄著 河原書店)
作者の石塚さん曰く、この狐蛇はやはり般若の骨格から制作されたそうです。
印象としては、とても恐ろしく般若の型変わりだと思って見ても女性の顔には見えません。
超人的な鬼=神 こんな方程式が成り立つのでしょうか。
・鍛冶場の再現

後場では鍛冶場を再現した作り物が舞台正面先に出されます。一畳台の三方にしめ縄を張り、台の上には鉄床(かなとこ)に刀身、鎚、そして場を清める御幣が置かれています。
能ではどういうわけか、しめ縄は麻ひもを黒く染めたものを使っています。
しめ縄は稲を使って作られているので黒いわけがありません。なぜ黒のひもを使うのか理由が全く分からないのですが、そういう教えでやってきている「決まりこと」にならって今でもやっているわけです。
観世榮夫先生はこれはおかしいだろうとよく仰っていました。
かくして、稲荷明神が相槌を打って見事な宝剣が出来上がったと舞台は終結を迎えます。
めでたしめでたし!
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