第19会青葉乃会「江口」
日時 平成30年10月8日(月・祝)午後2時開演
場所 宝生能楽堂
【能「江口」について】
作者 観阿弥が原作、世阿弥が改作
時 平安時代のある秋の日
登場人物 登場順
ワキ 旅僧
ワキツレ 従僧二人
前シテ 里女(じつは江口の君の幽霊)
アイ狂言 里人
後シテ 江口の君
ツレ 江口の遊女二人
大阪の淀川と神崎川を結んだ運河の口にあたる所に江口の里があり、平安朝のころは遊女の町として大変な賑わいを見せていたようです。この江口の里の遊女が、能「江口」の主人公になっています。
前場ではシテ・江口の遊女の化身が現われ、ワキ・旅僧とのやり取りの中で、かつて西行法師が宿を求めた時の歌の問答歌が繰り広げられます。西行を戒めるかのように自分の歌の本意を説いてゆき、遊女ながら西行を打ち負かすほどの優れた歌人であったことが伺えます。
後場では屋形船に乗った江口の遊女が現われ、客船を誘引する華やかな場面が再現されます。このあと切々と身の悲しさ、罪業の深さを訴え、世の無常観を説いてゆきます。最後には遊女は普賢菩薩になって西方浄土の世界に導かれてゆくのでした。
遊女の霊は普通の能のように、旅僧の弔いによって成仏したわけではありません。不浄の世界に身を徹して生きた、その経験が無常観を諦観し、そのことによって遊女は普賢菩薩になりえたと、逆に僧の目の前でこの真理を説いてみせているのです。作者世阿弥の狙いはここにあると思います。そしてこの作品の最大のクライマックスは、遊女が普賢菩薩に変身する後半最後の場面だと思います。
演じる者としては、気品にあふれ、清らかで美しい世界が表現できれば良いと思っています。これを感じていただくのは大変なことですが、心身とも引き締めて取り組みたいと思っております。