【はじめに】
能「雷電(らいでん)」のサブタイトルを『道真
の復讐劇』とします。
”雷電”という言葉を聞いても、今の時代では何のことかピンときません。
しかしこの作品が作られた室町時代では、太平記や北野天神縁起絵巻の普及によって、
雷電=雷神=菅原道真
という方程式が行き渡っており、
当時の人々には、能「雷電」とは、道真の怨霊が雷となって宮中を襲った”あの物語”のこだろうと、すぐにピンと来たのではないかと思われます。(私の偏見と独断ですが)
菅原道真と言えば今では天神さん・学問の神様として全国的な規模で祀られていますが、
能「雷電」は道真の怨霊がテーマになっていまして、神様どころか、復讐の鬼が描かれています。
【能「雷電」の背景】
道真は55才の時に最高官僚・右大臣の地位まで昇進します(55才)。その時の左大臣が藤原時平。
しかし時平の陰謀によって道真は失脚し、九州の大宰府に流され(57才)、2年後憤死しています。
道真の死後、都では陰謀を働いた時平の仲間達が次々と亡くなり、また宮中に雷が落ち、たくさんの人が死亡する事件が起こります。
これはきっと道真の怨霊がなせる仕業だと考えた朝廷は、道真に天神の称号を贈り、官位も太政大臣に昇級させるなど厚く遇することによって
道真の怨霊の怒りを鎮めた。
こうした道真の伝説(太平記、北野天神縁起絵巻)をもとに、道真の怨霊の世界を描いたのが能「雷電」です。
※余談ですが、雷電の言葉の意味
雷電(らいでん)とは『ピカー、ゴロゴロ』の雷(かみなり)の事ですが、詳しく調べると、
雷(かみなり)に際して起こる音は「雷鳴」で、「雷電」の「雷」。『ゴロゴロ』
一方、雷(かみなり)に際して起こる光は稲妻で、「雷電」の「電」。『ピカー』
北野天神縁起絵巻に描かれた清涼殿落雷事件