2月28日
おかげさまで「逗子能」は満員のお客様をお迎えしての公演となりました。
番組
半能「高砂」 観世銕之丞
狂言「佐渡狐」 山本東次郎
能「羽衣」 柴田稔
ご来場頂きました皆様方には、心より御礼申し上げます。
さて私が演じました能「羽衣」は、現在、現行曲の中で一番上演回数が多い作品になっています。
初心者向けの公演には、まずこの「羽衣」を選びますし、学生鑑賞能(小・中・高・大学生)でお見せする曲目もほとんどがこの「羽衣」です。
私も「羽衣」は年間通して何回も謡っています。
「手慣れた作品」となっている「羽衣」ですが、とても多くの能楽師が演じているわけですから、非常に洗練を重ねている作品となっているわけで、逆に言えば演じる側とすればとても難しい作品になっているといえます。
基礎的なことはマスターしているのが当たり前、演者の美意識によって、自分なりの世界でどのような「羽衣」が出来るのか、これが「羽衣」の上演にさいして、お客様も我々能楽師の間からも判断されることになります。
この事柄に対して今回の「羽衣」に臨みました。
<逗子能「羽衣>

観世流の「羽衣」の公演は、ほとんどが、「小書き(こがき)」=「特殊演出」によって上演されていますが、今回はあえて「小書き」ナシの形で上演させていただきました。
「小書き」=「特殊演出」というのは、能の作品が生まれた室町時代にはなかった上演形態なのです。
江戸時代に能は幕府の式楽となって以来、新たな作品を創ることよりも、これまでの作品を継承し、いかに守っていくかという保守的な時代になって行きました。
逆に言えば、能の作品を面白く見せるための工夫が考えられるようになり、それによって「小書き」として新たな演出が生まれ現在に受け継がれていることになります。
観世流の「羽衣」の場合では, 江戸時代には『和合之舞』、『彩色之伝』という「小書き」が考案されました。
『和合の舞』は序之舞と破之舞が統合されてコンパクトな舞として演ぜられます。
『彩色之伝』では、天女が神格化されて、月宮殿で舞う天女の舞を見せることが目的となり、春の三保の浦の情景で舞う舞が無くなり、詞章が大幅にカットされます。
小書きナシの場合では1時15分ほどかかる「羽衣」が、『和合之舞』では1時間ほどに、『彩色之伝』では50分ほどの上演時間となります。
現在では小書きナシの「羽衣」はとても稀な公演となっています。
今回なぜ「小書き」ナシの公演を選んだか。
それには理由が二つありました。
①省略なしで、「羽衣」の詞章を全部聞いてほしかった。
②舞台に松の作り物を出したかった。
①「羽衣」の全部の詞章
「羽衣」はとても美しい日本語で、三保の松原を舞台に春の情景が描かれています。
能の作者の優れた文章力、表現力を余すところなく伝えたかったのです。
②舞台に松を
小書きが付くと、橋掛かりの一の松に欄干越しに衣を掛けますが、小書きがないと舞台正面先に松の作り物を置き、そこに衣を掛けます。
舞台に置かれた松が、三保の松原のなかで、天人の衣がかかっていた松という設定です。
この松の下で、天人と漁師のやり取りが行われ、物語が展開してゆきますので、舞台に松があった方が理に適っているのです。
しかし天人はこの松の前で舞を舞うため、正面から舞台を観るのに邪魔になるという欠点もあると言えます。

・今回の「羽衣」ついて
<天冠>
観世流の「羽衣」の場合、頭に載せる天冠の建物には次の三つのパターンが基本になっています。
小書きナシ・・・「月」 (ただし鳳凰でも可)
和合之舞・・・・「鳳凰」
彩色之伝・・・・「白蓮(びゃくれん)」
「月」の天冠(一角仙人のツレ役)

「鳳凰」の天冠(今回の羽衣より)

「白蓮」の天冠(今回のチラシより)

今回私は本来なら「月」の建物を選ぶことになりますが、「鳳凰」にしました。
理由は単純で、「鳳凰」の方が「月」よりも華やかに見えるからです。
<面>
面は小面か増女のどちらかの選択になりますが、いかにも可愛らしい天女を演ずる自信がなく、増女を使って気品を全面的に主張する天女のイメージで取り組みました。
<装束>
天女の衣は白の長絹、下は赤の腰巻で、白赤のすっきりした出立になったと思います。
<キリの舞>
小書きナシの「羽衣」ですと舞台で舞い納めることになっていますが、
天女が天上に登ってゆく最後の場面は、橋掛かりを使った方が効果的なので、小書きが付いた時のような型付けで行いました。(師匠の銕之丞先生にご相談の結果です)

1時間15分の所演となりました。
ご覧いただきました皆様方には、ここに改めて御礼申し上げます。
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