6月9日は銕仙会の定期公演でした。
能「小督(こごう)」 清水寛二
狂言「鱸包丁(すずきぼうちょう)」 石田幸雄
能「鉄輪(かなわ)」 山本順之
今日はこの中から能「鉄輪」について、
生きながら鬼の姿となり、裏切った男と、その女のもとに襲いかかるという女性の嫉妬そのものを強烈に描いた作品です。
京都・下京辺に住む女が、貴船神社に丑の刻詣りをします。
憎む男を呪い殺したいと願を立てて参詣する女の祈りを、神が受け入れたのです。
神託には「身に赤き衣を着、顔には丹を塗り。頭には鉄輪を頂き、三つの足に火を灯し。怒る心を持つならば、たちまち鬼神と御なりあろうずるとの御告・・・」
これによってこの女性は、鬼の姿ととなって復讐する力を神から授けられた事になります。当時の貴船の神は、呪いを引き受けてくれたわけですね。(ちなみに
今の貴船神社は、縁結びの神社になっていますが。)

これを知った浮気男は、陰陽師・安部晴明(ワキ)に祈祷を頼みます。
男と女に見立てた茅の人形を作り(能では男は烏帽子、女は鬘でこれを表しています)加持祈祷します。上の写真が安部晴明の祈祷場になり、一畳台と三重棚が置かれています。
さてそこに鬼に変じた女が現れるのですが、嫉妬に狂うドロドロとした女の怒り、これは言い換えれば、誰しもが心の奥底に持っているものです。その想いの高まりを現わすのがこの能です。人には一番知られたくない恥部をさらけ出す、それが能「鉄輪」なのでしょう。
さてさて、今すぐにでも『丑の刻詣り』をしたいと切実に思っておられる方に道しるべです(笑)
この「鉄輪」の女が住んでいたところは、『鉄輪井戸』として今でも史蹟として残っているようで、下京区堺町通松原下ル所にあるそうです。簡単に言うと、川原町通りの五条と六条の間の左手辺りです。
ここから貴船神社までは約10キロ。謡本に基づいて歩いていくと、賀茂川を北上して、下賀茂神社そばの『糺の森』から『御菩薩(深泥)池−みぞろいけ』を通り、『鞍馬川』を渡って『貴船』に着きます。片道約2時間くらいだそうです。丑の刻は午前2時のことですから、夜の12時頃出発すればいいわけです!
人知れず、挑戦してみてください!