2月22日 こども能発表会と逗子能は無事終了しました。
杜若についての解説を書こうと思っていましたが、さぼりクセの小悪魔が邪魔をして果たせなかったです。スミマセン!
逗子能を見に行く前にブログを見ましたが作品紹介がなかったと、多くの方から言われました。
FBの逗子能イベントではアップしたのですが、そのままブログでもアップしたらよかったと悔やんでいます。
【こども能】
こども能が10時半始め、逗子能が午後2時始め。
毎年のことですが、逗子能の日はかなりなハードスケジュールです。
逗子のこども達30人に袴をはかせるため、9時前にはホールに行っています。朝6時起きです!
お手伝いも4人ばかりお願いしていますが、楽屋は大賑わい。(笑)
今回も川崎こども能から12名の友情出演があり、総勢42名の発表会となりました。

日本伝統文化をこども達に伝えることが私の仕事ですが、今回は謡や仕舞を教えること以上に、もっとも基本的なことですが、姿勢を良くして正座する、立居振舞をきちんとする事をやかましくいってきました。
その成果は十分にあったと思います。舞台での立居振舞、見ていて気持ちよかったです。
当たり前に見える所作、それをこなすには大変な時間と労力がかかります。
今回は初の試みとして、逗子のことも達30人の地謡で、私が「人間五十年」の仕舞を舞いました。
気持ちよかったですよ!
ご覧になった方も、この光景は圧巻だったのではないでしょうか。
こども達はどんな思いで謡ってくれたのでしょう、良い思い出になればいいのですが。

能「杜若・恋之舞」
面は現代の能面作家・石塚シゲミさんの「節木増」を使いました。
本面は宝生流にあるもので、それを写されたものです。
上品な憂いと気品があって杜若にはよくあっていたと思います。

「杜若」は紫地で業平格子の文様の長絹を使うことが多いのですが、水辺に咲く杜若のイメージで水色の長絹を使用しました。
先代の銕之丞先生がこの長絹で度々「杜若」を舞っておられました。
『恋之舞』の小書きが付くと、頭にかぶる初冠(ういかんむり)に心葉(しんよう)といって、杜若の花を付け、日陰の糸(ピンク色の飾り)を付けます。また腰には真の太刀を穿き、普段より、より一層艶やかなすがたになります。
前シテは紅白段の沢潟(おもだか)文様の唐織を着ています。

普通の能ですと、前シテから後シテに変身するときは、中入りして幕の中で装束を着替えますが、
「杜若」は物着(ものぎ)といって、この変身を舞台で行います。
そのため、舞台で裸になるわけはいかないので、あらかじめアトの装束を中に着込んでいるのです。
装束を二枚重ねて着ているので、下手するとデブで妊婦のような姿になってしまいます。(笑)
この写真も腰のあたりが膨れているのが分かります。
自分自身では見苦しくない程度だと思っておりますが、、、(笑)
会場ロビーには「杜若」の舞台となっています愛知県知立市にあります、かきつばた園の写真を2枚展示しました。


今回の公演のため、このかきつばた園にお願いして写真のデーターをいただきました。
杜若の花を見たことがないという方が多くおられたので、八ツ橋の様子と杜若の花のイメージを持っていただくための企画でした。
事後報告となりましたが、FBにアップした杜若の紹介を、こちらに張り付けておきます。
【杜若について】
能は「見えないものを見る演劇」だと言われていますが、この「杜若」はそのもっともよい例だと思います。
その想像の手助けをさせていただきます。
舞台は杜若で有名な三河国の八つ橋(いまの愛知県知立市)
登場人物はたったの二人。
シテー女人(じつは杜若の精)
ワキー旅僧
この二人の会話によって舞台は展開してゆきますが、ワキの旅僧は皆さまご自身だと思ってください。
僧があまりにも美しい杜若に見惚れていると、群生している杜若の中から一人の女性が現れ、僧に声をかけます。美しい杜若の中から現れるのですからこの女性は美人に決まっています。
この女性が三河国の八つ橋の杜若について、伊勢物語の話を紹介しながらそのいわれを語ってゆきます。
・この沢の水が蜘蛛の手のように八つに流れているので橋を八つかけたので八つ橋といわれる。
・むかし在原業平がこのところで「かきつばた」という5文字を句の頭において和歌を詠んだ。
(から衣 きつつなれにし つましあれば はるばる来ぬる たびをしぞ思う)
やがてこの女性は一夜の宿と、僧を自宅に誘います。
舞台はここから女性の庵へと変わっていきます。
このことも頭に入れておいてください。
ふたたび現れた女性は、頭に業平の冠をつけ、高子の衣を身にまとった杜若の精でした。
杜若の精は、業平の生い立ち、高子と別れた東下りのさまを語り、業平はじつは歌舞の菩薩で陰陽の神だったと明して舞を舞い、草木成就の身となって明け方の空に消えてゆきます。
後半部分は業平の二重にも三重にも複合したイメージで構成されていていますが、単純にあでやかで美しい舞姿をお楽しみいただければよいかと思います。
『恋之舞』の小書き(特殊演出)が付くと、後半の出立に変化があり、冠には心葉(しんよう)といって杜若の花をつけ、日陰の糸という桃色の飾り物を付けます。※チラシの写真 腰には太刀を履き、姿がより一層あでやかになります。
舞では、橋掛かりに行って水に映る自分の姿に見入る型が入るのが特徴です。
杜若の美しさに秘められた恋の物語を、杜若の精の美しさに重ねながらご覧頂ければと思います。