能楽界の重鎮・片山幽雪先生が昨日亡くなられました。享年84才
<ご本名は博太郎、昭和60年(1985)に九世九郎右衛門襲名、平成21年(2009)観世宗家より「雪号」が贈られ「幽雪」と名乗る>
私の先生の印象を言わさせていただくと、飾り気のないとても真摯な方だったと思います。
晩年の舞台では芸に一途な生きざまがそのまま舞台に現れ、「まことの花」とはこのことかとも思いました。
「老後の初心」を常に心がけておられたのだと思います。
昨年に銕仙会の先輩が「姥捨」を演じられたとき、後の宴席で、
「姨捨という能は、老人となって家族に捨てられるという哀しみが、満月の月夜で『今日は綺麗なお月さんやな』と思う気持ちと同化することが大切なんです。」
そのようなことを仰っておられました。
「姥捨」を5回だったか8回だったか忘れましたが、何度も演じられた経験から発せられた想いなのです。
貴重なお言葉だと思います。
ここに謹んでお悔やみを申し上げます。 合掌
追、
片山先生は観世銕之丞家ともかかわりが深く、若いころは六世銕之丞(華雪)、七世銕之丞(雅之)に師事され、月に一度京都から東京まで、それこそ新幹線のない時代ですが稽古に通われていたようです。銕仙会の定期公演にもご出演されていました。
また私の師匠・八世銕之丞先生とは同い年で、お二人とも若いころから交流があり、その御縁でしょうか、
銕之丞先生のご長男・暁夫師(現九世銕之丞)と片山先生のご長女・三千子さん(現四世井上八千代)がご結婚されています。
お子様は安寿子さんと淳夫さん。それぞれ京舞と能を継承されています。