能の「通小町」に現代劇を融合させた芝居、「通小町異聞」が1月30日、31日と新国立劇場・小劇場で行われました。
能と現代劇の融合と言っても、われわれが現代劇の役者さんと言葉を交わしたりする、そんな芝居ではありません。
能は能で普段どうりのことを行っているのですが、能のナレーション的な役割を、現代劇の役者が担当するというものでした。
詳しい配役は
前回のブログをご覧ください。
「通小町」は、小野小町に恋をした深草少将が百夜通いをしたという説話をもとに創られた作品です。
前場は小町の化身が現われ、僧に自分の跡を弔ってくれるよう頼みます。
後場では小町の成仏を許さない深草少将の亡霊が現われ、百日目で命が絶えた百夜通いのさまを再現し、強い怨念のさまを見せます。最後には小町・小将二人ともに成仏するという物語です。
今回の「通小町異聞」では僧と小野小町・深草少将のほかに、才助と言って深草少将のお供役が登場し、この才助は少将の百夜通いに連れ添った人物という設定です。
時は平安時代、まずこの才助が登場し、主・深草小将のことを想い懐かしみ、また小町の風聞などが詳しく説明されます。
それから能「通小町」が始まるわけです。
この才助の目から見た少将、小町が随時説明されるのです。
才助のセリフの間、われわれはピタッと進行が止まります。
ビデオを見て一時停止のボタンを押して、説明を加えるという感じでしょうか。(^^♪
たとえば、
小町 『いにしへ見なれし、車に似たるは、嵐にもろき落椎』 (能謡)
才助 「椎の実は、昔見なれた車に似ているだなんて、やっぱりこの女は身分の高い貴族の女に違いない」 (セリフ)
ところどころにこのような感じのものが入ってくるのです。
能の言葉を解きほどくという役割をしているのですね。
さすがに最後の能が盛り上がる場面では、才助の侵入は一切ありませんでしたが。
「通小町異聞」は才助の説明や、川の音や鳥の声、声明といった音響効果、それと照明効果で能「通小町」を分かりやすく、大きく膨らました芝居だったと思います。
公演最後の打ち上げで、われわれ仲間の一人が、「通小町」の内容が初めて分かった!といった人もいました。正直でいいと思います。(^.^)
音響や照明の方は普段能とはまったく関係のない場で仕事されていますので、能の風習や伝統に捉われずに自由な発想で行われたのがかえって良かったのかもしれません。
リハーサルも照明等の関係で面・装束を着けておこないましたので、私はこの二日間で「通小町」の小野小町役を四回も演じたことになります。
いい経験をさせていただきました。
ただ今回の舞台は、劇場の舞台の中央に三間四方の張り出し舞台を設置し、客席が三方向から舞台を囲むという(これをスラスト・ステージというのだそうです)舞台設営でした。
私が舞台で座ったすぐ後ろにはお客様がいて、足が痛くても微動だにとも動けません。(汗)
今回はこれが一番つらかったですね。(笑)
明日はいよいよ乱能です。
「石橋」の申し合わせも、本番直前に一回あるだけです。
心配だな~~~。
でも舞台で恥をかかないよう頑張ってきます。(^。^)