お正月も、もう終わりましたね。
今年はどこにも行かず、こんな暇なお正月は初めてです。
その分、身の回りの片づけがはかどり助かりましたが・・・
さて、そろそろ気を引き締めていかなければ!
公的に活動するのは8日の稽古能からですが、先日少し触れましたが、この稽古能で大役があります。
実は2月21日に行われる都民劇場能の公演で、能[求塚」が上演されます。
前回の都民劇場能は銕之丞師の[井筒]で、次回の予告では梅若六郎師の[求塚」となっていました。
何かのご都合でシテが梅若晋矢さんに代わり、その地頭を私にと六郎師より依頼がありました。
[求塚」の地頭を指名されたことは大変名誉なことでもあり、大抜擢なので、本当にありがたいことなのですが、
しかし、即答で、ありがとうございます! よろしくお願い致します!
というわけには行きません。
『ちょっとまった~~~』 なのです。
「求塚」は観世流では長らく途絶えていた作品で、先代の家元(元正師)が華雪師(六世銕之丞)に復曲を依頼され、昭和26年に復曲され、それ以後銕之丞家ではとても大切に扱っている作品で、華雪師はその著書の中で、「砧」に並ぶ大曲だといわれています。
それ以後何年もかけて、銕之丞家の方々が手塩にかけて育ててきた作品なのです。
若者がおいそれとする作品ではありませんし、シテの役はまだ挑戦してよいと思うのですが、
地頭は相当の力がないとこの作品の世界を謡いきれません。
先代の銕之丞先生は、能の出来の良し悪しは、地謡が7割から8割を占めるといわれていました。
私は決して逃げ腰になっているわけではありませんが、『分相応』ということがあります。
地頭の役をお断りしようかどうか、ずいぶん悩みました。
最終的に銕之丞先生にご相談したのですが、この話を聞かれた時はとてもびっくりされていました。無理もありません。
「へーっーー」 苦笑いも含まれていました。
銕仙会の公演の中で、今私が「求塚」の地頭をすることは100パーセントありえません。
「勉強だと思って、しっかりやればよいでしょう」
とのご返事をいただきました。
こういういきさつで、梅若晋矢さんの「求塚」の地頭をお受けすることになりました。
「求塚」は頻繁に出る作品ではありませんが、たまたまこの春に3回上演されます。
山本順之 1月26日(土) 国立能楽堂 特別公演
梅若晋矢 2月21日(木) 都民劇場能 宝生能楽堂
観世銕之丞 3月30日(日) 観世華雪五十回忌、観世榮夫一周忌追善能 観世能楽堂
8日の稽古能は山本順之師がシテの稽古なのですが、地頭をさせていただくことになっています。
大鼓は亀井忠雄師がお越しになるそうです。
背伸びをしても仕方がありませんが、本番さながらのつもりで頑張るしかありません。
「求塚」は、前半は初春の爽やかな景色に乙女達が現れ、後はその乙女が地獄に落ち、無残な地獄の責め苦を受ける様子が描かれます。
お正月早々から、この地獄の責め苦をずっと謡っていました。(爆)
「求塚」は生きていること自体が罪になる、という今では考えられない世界を描いています。
この作品についてはこれから、折々触れて生きたいと思います。