「夢の世界」
盧生は宿の女主に勧められ、「邯鄲の枕」で昼寝をすることに。
この引き立て大宮の客席側には枕が置いてあり、そちらを頭にして台の上にごろんと横になります。
両手を顔の前で組み右ひざを立て、頭は宙に浮かしています。この睡眠ポーズ、実はなかなか苦しいのです。ワキにすぐ起こされるので助かっていますが・・・(^_^;)
ワキの勅旨に起こされた盧生はあわてて起き上がるのですが、ここから夢の世界の物語が始まります。
盧生はワキに楚国(そこく)の王になることをつ告げられ、輿に乗って宮殿に昇ってゆきます。
輿はお祭りの時に見かける神輿を思い浮かべればよいのですが、能では輿の屋根の部分だけかたどった物を象徴的に使っています。
ワキツレの輿持ちが二人、シテを挟んで立ち並び、片手でこの輿を上に掲げています。
単純な仕掛けですが、王が乗る輿ですから本当はとてもゴージャスなものなのでしょうね。
そんな雰囲気をここで想像してください。
この間に引き立て大宮に置いてあった枕は片付けられけられ、この作り物は宿の寝台から雲の上にそびえ立つ宮殿へと変りました。
盧生が宮殿に座すと、あまたの臣下たちがそこに居並んでいます。
盧生は数珠を放し、掛絡を後見に取ってもらい、修道僧の姿からはなれて、完全に王になるわけです。ただ頭には黒頭をかぶっていて、これはさすがに変なのですが、その変なことをまったく気にしないのが、これまた能なのです!