おかげさまで逗子能「雷電」、無事に終えることが出来ました。
このブログで詳しくアップできなかったのが心残りです。
当日の舞台写真を紹介しながら、能「雷電」を紹介してみます。
「雷電」前場
「雷電」は『道真の復讐劇』だと前回のブログで言いました。
道真は自分を失脚させた連中に復讐することを心に決め、そのためにまず行った行動があります。
それは少年の頃、学問の師匠だった僧正という比叡山のお坊さんにあいさつに行くことでした。
前シテは道真が僧正に会いに行く場面です。
場所は比叡山の僧正の庵。
時は道真が亡くなってから半年後の秋の夜中。
前シテはこんな姿でした。
白い狩衣と水色の指貫を着ています。
これは貴族、または高級官僚の姿という能の約束事です。
頭の黒頭は亡霊、幽霊という、これも能の約束事です。
道真は右大臣、今でいうと内閣総理大臣まで昇進しましたのでこの姿は役柄としてはピッタリです。
幽霊として僧正に出会っていますので、黒頭を着けています。
ここで注目したいのが能面です。
アップで見ますとこんな面立ちをしています。
面は「中童子」と名づけられているものです。
道真が右大臣に昇進したのは55才の時。その幽霊の姿だとすると面はもっと年配の面立ちでないとおかしいです。
なぜこんな若い面を着けているかというと、僧正にお世話になったのは道真の少年期です。
僧正と再会する場面では、少年期の道真を表現したいためだったのです。
右大臣に少年の面、とても面白い表現だと思いますが。
この姿は先代、八世銕之丞師の扮装をそっくりそのまま取り入れさせていただきました。
この発想力はすごいですね!作品をしっかりと読み取っている故になせることだと思います。
上の写真は道真の亡霊が僧正の庵を訪ね、扉をトントンとノックしている場面。
下の写真は僧正に再会して昔のことを懐かしんでいる場面。
このあと、この亡霊は僧正にこんなことを言います。
「私は復讐を行う。その時朝廷からあなたは私を退治するために呼ばれることと思う。
でも絶対に来てはだめですよ。」
それは約束できないと僧正が言うと、すごい形相になって怒り、
本尊に手向けられていた柘榴(ざくろ)をかみ砕き扉に吐き掛けると、柘榴は火炎を上げて燃え出します。
しかし僧正は火を消す印を結ぶと炎は消され、煙が立ち込めている中に道真の亡霊は姿を消したのです。
前半はこのような話です。
次回は後半の舞台を紹介します。