第16回青葉乃会
日時:平成28年12月18日(日) 午後2時始め 於:宝生能楽堂
番組
解説 「本日の演目について」増田正造(武蔵野大学名誉教授)
仕舞「誓願寺・クセ」 観世銕之丞
狂言「鏡男」 山本東次郎
能「砧」 柴田稔
<仕舞「誓願寺・クセ」について>
京都・新京極にある誓願寺の本堂にかけられている「南無阿弥陀仏」の額 (平成21年8月撮影)
「誓願寺」の能を謡ったり聴いたりしていると、私はグレゴリオ聖歌を聞いた時と同じような陶酔感を覚えます。
自分の罪や穢れがゆるされ、心が清く洗い流され天上界に登ってゆく、極楽世界にに入っていく、そんな感じです
能「誓願寺」、時代は平安時代。登場人物は一遍上人と和泉式部。所は誓願寺。
一遍上人は、人はだれでも「南無阿弥陀仏」を唱えると極楽浄土の世界に行けると説いた人です。
和泉式部は紫式部と同世代の平安時代を代表する女流歌人です。しかし和泉式部は恋多き女性で、多くの男性との恋の遍歴の持ち主です。
能の世界では恋の世界におぼれると必ず地獄に落とされることになっているのですが、この作品では手法を変えて、罪多き女性だからこそ救われたのだとしているのです。式部は一遍上人の法力によって極楽浄土で歌舞の菩薩となり、上人の前で極楽世界を出現させて見せています。
今回の「誓願寺・クセ」は、その極楽世界のさまを舞い謡うという能「誓願寺」の一番の見どころです。
仕舞では面・装束を付けずに、紋付き袴の姿で舞いこみます。
「誓願寺」の解説でこんなに素晴らしいものがあります。
『浄土教の美術に、「来迎図」と呼ばれる絵画がある。念仏の行者が臨終する際に、阿弥陀仏が聖衆(しょうじゅ)を率いて現われ、極楽浄土に迎え取るところを描いたもの。
極楽浄土の荘厳をまのあたりにするかの如き弥陀の来迎は、多くの人々に浄土への憧れを伴った法悦をもたらしたに違いない。
この来迎の情景を舞台に実現してみようというのが能「誓願寺」の作者の意図だったのではないだろうか』 (小田幸子)
阿弥陀聖衆来迎図(東京国立博物館蔵)
「誓願寺・クセ」詞章
『笙歌遙かに聞こゆ、孤雲の上なれや。聖衆来迎す、落日の前とかや。
昔在霊山の、御名は法華一仏。いま西方の弥陀如来。
慈眼慈衆生現れて、娑婆慈眼観世音。三世利益同一体。
ありがたや、我等がための観世音。
若我成仏の、光を受くる世の人の。
我が力には往き難き、御法の御船の水馴竿。
ささでも渡る彼の岸に、到り至りて楽しみを。
極むる国の道なれや。
十悪八邪の、迷いの雲も空晴れ。
真如の月の西方も、ここを去ること遠からず。
唯心の浄土とは、この誓願寺を拝むなり』
※誓願寺 京都の中心街に河原町通りが通っていますが、河原町通りの西側一本目に四條から一キロほど北に延びる新京極通りと言って、賑やかな商店街があります。そのはずれに誓願寺があり、和泉式部の墓のある誠心院があります。
京都 誠心院 和泉式部の墓
<チケット>
S席(正面特別席) 8000円
A席(正面) 7000円
B席(脇正面) 6000円
C席(脇後方、中正面 5000円
学生席 3000円
<お申込み>
➀TEL 銕仙会(平日10:00~17:00) 03-3401-2285
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以上、どうぞよろしくお願い申し上げます。