12月28日 横浜美術館 ドガ展
ドガの「エトワール」 、どうしても観ておきたくて、やっと念願がかないました。
エトワールとは、フランスのオペラ座で最高位のダンサーのことで、
その意味は、エトワール=星。
ドガが描く「エトワール」は、さしずめ「バレーの星」という意味になりますかね。
この「エトワール」に描かれたダンサーの姿ですが、なんと柔かく、しなやかなのでしょうか。
この絵の解説には、着地する寸前の表情とありますが、ふわっと宙に浮いている感じを受けます。
ドガといえば、バレーの踊り子、とすぐに連想されますが、
何十年もバレーを見続けて、バレーの美しさというものを十分知り尽くしているのでしょうね。
先日フィギアスケートの全日本選手権が行われていましたが、トップレベルの人たちは表情がとても柔かく美しいですね。
私は、フィギアスケートもバレーも、そして能も、究極の美しさはみな同じで、この“柔かさのなかにある”と思うのです。
力みすぎては固くなり、自分の気持ちが相手に伝わりません。
もとろん芯は強くなければなりませんが、表現はふっと力が抜けて、観る人に安心感と安定感を与えて、それによって心をぐっ演者に引き寄せる事ができるのだと思います。
そういう意味で、ドガの「エトワール」はバレーの一番美しい姿が描かれているように思えて、私にはとても興味深いものでした。
軽やかに地上から浮かんでいる、とても柔かい姿です。
いつまで観ていても飽きることはありません。
「エトワール」はパステルで描かれているのですが、レースの透き通った衣装や、しなやかな白い肌の感触を出すにはもってこいの技法のように思われます。
下から照らされた光の反射が、ダンサーに見事に浮かび上がって美しさを増しています。
しかしこの絵の狙いは、美しいダンサーを描いただけではなく、当時のフランスのバレー界を象徴する構成になっているのだそうです。
当時、ダンサーになるのは貧しい階級の少女が多く、エトワールに登りつめて裕福なパトロンに見初められることが成功の道だったそうです。
この「エトワール」の絵を良く見ると、ダンサーの後ろに黒い服を着た男性がいます。彼はこのダンサーのパトロンで、その後ろには、まだエトワールになれないダンサーが、羨望のまなざしで踊るダンサーを見つめています。
そのようにみると、この絵のおもしろさが倍増します。
今回の展覧会では、ドガの青年期から晩年に至るまで年代別に多くの作品が展示してありました。
青年期の古典主義から印象派へと作風が変わっていくところが面白かったです。
展覧会は横浜のみなとみらいにある横浜美術館で、12月31日まで。