毎年薪能の締めくくりで行われるのが「新宿御苑 森の薪能」です。
しかしこの薪能はこれまで雨のため何回も中止になってきました。
昨年もいつものように雨で中止でした。(笑)
今年は11日の日曜日、天が味方して快晴のもと、無事行われました!
今年から客席はすべて椅子席となり、3500人のお客さまでした。
10月も半ばだと夜になるとずいぶん冷えてきます。地べたにシートをひいての観劇はつらいものがありますよね。この日もずいぶんと冷えて、地謡に座っていてもとても寒かったです。
装束を着ている役の人はちょうどよい心地なのです。(笑)
途中休憩時間に、お客様が舞台周りに設置されている薪に集まっておられました。
はじめは何事が起ったのかと驚きましたが、何のことはない暖を求めていたのです。
こんな光景、初めてです。(笑)
薪能の開催日時、少し考えものですね。
番組は昨年開催されなかったそのままの番組です。
(昨年のブログ)
第25回新宿御苑 「森の薪能」 番組
能・狂言 案内人 真野響子
狂言 「業平餅」 野村萬斎 野村万作
能 「葵上」古式 観世銕之丞 森常好
今回は開演に先立って真野響子さんと、銕仙会のプロデューサー・笠井賢一さんが能・狂言の解説をされていました。
真野響子さんが観客の代表として、笠井さんに質問するという形式です。
真野さんはかなり能の勉強をされてきたのか、ポイントを適格にとらえての質問で、初心者の方が抱くであろう基礎的な疑問を投げかけておられました。
女優さんが解説に加わるのは今までになかったような気がします。
真野響子さんは昨年暮れに上演された、白洲正子さんを主人公にした新作能「花供養」(多田富雄原作)に出演されていますので、そのご縁から今回の出演になったのだと思います。
この日の能は「葵上」古式。
「葵上」に古式という小書き(特殊演出)がついての上演です。
じつはこの古式というのは、最近になって演じられている形態なのです。
能は観阿弥・世阿弥が大成して今まで600年かけて伝承されていて、能の演じ方は当然、この600年の間に変化しています。
最近古い伝書本などが発見されて、600年前の演じ方と今とでは、明らかに違っているとされる作品がいくつか判明されました。そうしたなか、観阿弥・世阿弥時代に行われていたままで能を演じようとするのを「古式」と言っています。
「葵上」のほか、「自燃居士」、「雲林院」、「弱法師」などが古式の小書きで演じられています。
では、「葵上」の古式は今のやり方とどう違うのか、次回説明したいと思います。